先日いま公開中の映画「
バブルへGO!」を観た。今回ここでその内容に触れるつもりはないが、私としては気になった点がある。それはタクシーに乗るシーンが何回かあったが、トヨタ・コンフォートに乗っていたことだ。ちなみに、「バブルでGO!」の時代設定は17年前の1990年(平成2年)であるが、トヨタ・コンフォートが登場するのは遅れること5年。バブルもはじけ、不景気真っ只中の1995年(平成7年)のはず。先に登場した日産・クルーでさえ1993年(平成5年)である。1990年(平成2年)頃のタクシーは私の記憶の限りでは小型車は(少なくとも札幌は)トヨタ・コロナとか日産・ブルーバードだったはず。中型はローレルとかマークIIのセダンあたりが走っていたのではないか。そういえば、タクシー専用車種の先駆けとなったマツダ・カスタムキャブ(ルーチェがベース)が1989年に発売されているはずだ。まぁ私のようにクルマで時代考証をしてしまう人は少ないとは思うが、もう少しこだわって欲しかった。ところで、タクシーとして活躍するトヨタ・コンフォートには3タイプあることをご存知だろうか。「コンフォート」「クラウン・コンフォート」「クラウン・セダン」とトヨタではそれぞれ区別して呼んでいる。まぁ普通の人にとってこの3台を見分けるのはかなり難しいと思うが...。せっかくの機会なので少し説明したい。ちなみに、コンフォート系のルーツはクラウンではなく、80系のマークIIである。88年から92年にかけて販売された6代目マークIIはHT/セダンの2ボディが用意された最後のモデルで、HTは92年にモデルチェンジをしているが、セダンはコンフォートの発売まで継続生産された。私が免許を取るために通った自動車学校の教習車もこのマークIIセダンのLPGガス車だった。そういう意味では相当古めかしいプラットホームではあるが、好景気の時に(当時の)主力車種マークII(三兄弟)の為に作られたプラットホームで有ると言うことは、距離を走るタクシーならば決して悪いことだらけではないのかも知れぬ。まず「コンフォート」は全長4590mm全幅1695mm全高1515mmホイールベース2680mm。エンジンはLPGを燃料とする3Y-PE型4気筒2000ccのエンジンで、79ps/4,400rpm 16.3kg-m/2,400rpmを発揮。結構トルク型の様だ。ちなみに、タクシーの小型車枠は5ナンバー車でかつ、全長4600mm以下である。「コンフォート」の中型車版(ストレッチモデル)が「クラウンコンフォート」である。全長はコンフォート+105mmの4695mm(5ナンバー枠一杯ですね)全幅1695mm全高1,515mmホイールベース2785mmである。エンジンはコンフォートと同一であるが、「クラウンコンフォート」のMT車は6名乗りのコラム4MT車(コンフォートはフロア5MT)である。ちなみに、タクシー仕様車の価格はあまり表に出ないが、私の手持ち資料ではコンフォートの"スタンダード"5MTが153.3万円~/クラウンコンフォートの"スタンダード"4MT(コラム)が170.1万円~である。(4AT車は+11万円)この定価でタクシー会社が買っているとは思えないのであまり意味のある数字ではないのだが、皆さんの予想より高いのではないか。法人向けの営業車って個人が見るとビックリする程の値引額ですからねぇ....。最後にコンフォート系の最上級「クラウン・セダン」は2001年8月に発売開始。エンジンは唯一、LPGの他にガソリンの1G-FE(懐かしい..)型直6気筒DOHCを積む。160ps/6,200rpm 20.4kg-m/4,400rpmは1,390kgのボディには贅沢とすら思えてくる。ボディサイズは「クラウンコンフォート」と同一。しかし、LPGの上級グレード"スーパーサルーン"だけにバンパーやサイドモールで肉付け(全長4830mm全幅1710mm)されたワイドボディ仕様がある。ちなみに、旧型となる先代クラウンセダンは150系クラウン(10代目)のセダンボディであり、150系クラウンは90系マークIIとプラットホームが共有であったため、80系のマークIIに由来を持つコンフォートから派生している現行「クラウン・セダン」は信じられないことにモデルチェンジした事によって中身が古くなったと言える。個人的には「クラウン・セダン」を買うならば先代後期(2.0LがVVT-i化された98年8月以降2001年まで)モデルを中古で買った方が良いような気もする。内装も当時の150系クラウンそのものであり、明らかに営業車を意識した現行型のモノより全てにおいて質感が高い。そんな微妙な現行「クラウン・セダン」だが、唯一興味を引くとすればトヨタマイルドハイブリッドシステム<THS-M>が設定されていることか。待機時間の多いショーファードリブン用途を想定し、アイドリングストップと極低速時のモーター駆動に特化した簡易的なハイブリッドシステム。これを搭載したトップグレード"スーパーデラックス"は308.1万円である。この手の法人セダンって整備がしっかりと行き届いている上に案外走行距離が少なく、ビックリするような極上車がとんでもない低価格で(個人で乗るような外観ではないためか)売られていることがある。こういう渋いクルマを愛車にしてみるというのもハズシ狙いとしては面白いかもしれない。何を隠そう、私も昔から結構好きでカタログなど資料だけは結構揃っていたりする....。そのうち日産のセドリックやクルーの話も書こうかな。