輸入車の中では今年一番の話題作になりそうなフィアット500に短時間ながら試乗してきた。2004年のジュネーブショーにコンセプトカー「トレピウーノ」として出展されて以来楽しみにしてきたクルマだけに、随分と待った気がする。早速、店内には1.2Lの「ラウンジSS」233万円のモデルが展示されていた。写真で見たときよりも多少大きく感じるが、全長3545mm全幅1625mm全高1515mmは日本の軽自動車から比べて、15cm長く(幅広い)程度。ホイルベースは2300mmだから、大抵の軽自動車の方が長い。エンジンは直列4気筒SOHCの1.2L。使用燃料はもちろんハイオクだが、燃料タンク容量は僅か35L(軽自動車も大抵は30~36L程度)。車両重量は僅かに1tを超える1010kg。最高出力69ps/5500rpm 最大トルク 10.4kg-m/3000rpmを発揮し、パワーウェイトレシオは15kg/ps。10・15モード燃費は15.6km/Lとなっている。発表会の初日とあって、販売店は結構な混雑。駐車場にクルマを入れるにも一苦労...。失礼な話だが、アレーゼでこんなにお客が詰めかけるなんて初めてなんでは??試乗も順番待ちで、約1時間ほど店内で待機。まぁその間もひっきりなしに客がやってくる。コンビニで買ったビニール袋を下げて徒歩で来る人もいれば、マセラティで来る人もいたり...それだけ幅広い層が注目してるって事なんでしょう。その昔、ニュービートルが発売された頃を思い出しました。ようやく、順番が回ってきて試乗開始。試乗に用意された車両は日本には正式に導入されていない1.2LのPOPと言うグレード。一応、後日190万円という価格でリリースされる予定とアナウンスされているグレードだ。私としてはこれが一番注目していたグレードだったので、嬉しい限り。上級グレードのラウンジと比べるとアルミホイール、グラスルーフやボディのメッキ加飾パーツが省かれるなど装備面で見劣りするが、私にはむしろその"素"の状態が心地良いクルマだ。また、ラウンジはシック(?)なグレー地のシートだが、POPはビニルレザー/ファブリックの赤白2トーンシート。ホワイトのボディにはこちらの方が映えていた。予想に反して、フィアット・500は最新の欧州車同様のガッチリとした重めのドアで「ズドン」という重厚感のある開閉音を聞かせてくれる。残念なことだが、日本のコンパクトカーはまだこの領域(安心感)に達していない。内装のセンスもさすが。決して高級感溢れるとは言えないが、自分が特別にお洒落なクルマに乗っているという高揚感は充分に感じさせてくれる。こういう演出(遊び心)がもし、デミオにあれば最高なのに。フィアット得意のデュアロジックは過去にも何度か試乗で経験しているから不安はなかったが、一般的なゲート式ATとは全く違うインタフェースを採用するから、デザインに惚れてこのクルマを買ったAT限定免許の方は当初面食らうだろう。なにせ、P(パーキング)レンジがないのだから。アイドリングは思いの外静かだし、低級な振動もない。ステアリングは電動アシスト付のデュアルモードタイプ。インパネに設置されたCITYモードスイッチを押すとアシスト量が増し、ステアリングが軽くなる。このスイッチを押すと驚くくらいステアリングが軽くなる。私の好みを言えば、標準モードでも軽いくらいなので、スイッチを押すと重くして欲しいのだが。残念ながら、あまり出来の良い電動パワステとは言えない。手応えが曖昧で、しっくり来なかった。加速していくと、デュアロジックは相変わらずの空走感とギクシャクしたショックを隠し切れていない。Mモードにして自分でシフトアップしていけば気にならないが、この辺りはNewパンダとほぼ同様の印象だった。ヒルホールドシステムがついているが、うっかりすると後ずさりする。試乗したコースの5割はノロノロ状態だったので、正直気になった。この辺りは日本の(特に首都圏)特殊な環境下でクルマに乗るリスクとして理解しておく必要がある。その反面、ダイレクトな加速感や燃費などメリットも多い。デュアロジックが必ずしも、日本車のATの様に振る舞う必要はない。まぁいっそのこと、このクルマはMTで乗りたいと思ったのは事実。エンジンはイタ車に期待する通りの印象で、低回転で図太いトルクをひねり出す...なんて事はなくて、快音を響かせながらグングン回りたがる。その際の遮音性は正直低いが、こういう快音なら私は苦にならない。むしろ、積極的に聴きたい。パワーウェイトレシオは15kg/psと聞けば、さぞ退屈な走りを想像してしまうが、そんな心配は無用。このクルマの走りを楽しむためにはアクセルはある程度メリハリをつけてグイッと踏んだ方がイキイキしてくるようだ。なんか、免許取り立ての頃に仲間が乗っていたスターレット・ターボとかシャレード・デトマソなんかを思い出した。ますます、このクルマはMTで乗りたいね。総合すると、電動パワステとデュアロジックの組み合わせには違和感が大きく、正直言って試乗前の期待値には届かなかったのが本音の所。今なら、マツダのデミオの方が走りの質感は間違いなく上。それと、フィアット・500には185/55R15のタイヤはオーバースペックかな。結構バタついていた。ベースモデルのパンダは155/80R13だが、私の記憶ではこちらの方がむしろ印象が良かった。スタイリングは文句なしに魅力的で個性的だが、即決でオーダー!!という程盛り上がらなかったのは残念。今後の熟成とグレード展開に注目していきたい。
フィアット・500を試乗の順番待ちしている間、じぃ~と眺めていたらスバルのR1と結構似ているなと思い始めた。細かいディティールは違えど、基本的なシルエットは案外近しいような気がします。まぁR1/R2は元々イタリア志向なんで無理もないか...。それと、コペンの後ろ姿とフィアット・500のフロントマスクも似てる気がするなぁ。ブツブツ...