今まで私のブログでは意識的にレクサスの事を書かないようにしてきた。それは自分で体験するまでは感覚で物を書きたくなかったから。向こうが新しい手法でクルマを売ると言っている以上、こちらも出来る限り色眼鏡をかけずに判断したかった。しかし、物珍しさで野次馬の殺到しているオープン当初ではその本質は見えまいと言う事で遠慮していたのだが、そろそろひと段落した頃かと思い、札幌市内の某レクサス店へ行って見た。朝10時頃だった事もあり、他に客は無し。もちろん、ルポGTIに乗り、私の服装も至って日常的なモノ。どんな出逢いがあるのかと期待して門をくぐる。私が駐車場に入るとすぐ受付の女性が立ち上がり、自動ドアのところでお出迎えスタンバイ。(レクサス店内に入っても暫く放置プレイされたという怒りの報告が雑誌等でも多く見られたが、それは純粋に来客数の問題だろう...。)お目当ての「IS」を眺めていたらセールス氏登場。まぁはっきり行って、極普通の対応ですね。(こちらとしては求めてもいないが、白い手袋をしているだの、ひざまずいて名刺を渡すだのって言う事も無く、普通で逆に安心...。)あまり過度にレクサスの「おもてなし」を期待する人は肩透かしを食らうのかも。(札幌と首都圏では顧客の質もお店の考え方も違うだろうから一概には言えないが...。)私は表面的なマニュアル的対応をされてもちっとも嬉しく無い。本当にレクサスの製品を愛している(信じている)セールス氏と出逢う事の方が価値があるのではないか。そういう人間がどの程度いるのか、今後育つのかが別れ道だろう。さて、サービスの話題はこの位にして...「IS」の話である。まずは展示車(こちらもIS250 AWD)だが、サンルーフが付いているせいか、屋根が低い。シートを一番低い位置に下げても頭上の余裕はほぼ無いに等しい。(私は比較的シートを立てる運転姿勢なので、シートを倒し、腕を伸ばし気味で運転するような人はもう少しヘッドルームの余裕は出るのかも。)またサイドの絞込みも結構強いのでお世辞にも広々した空間とは言い難い。典型的なスポーツセダンの佇まいである。内装の造りはさすがに緻密で品質感もある。ただ、造形や色使い等従来のトヨタ的上級セダンの常識から外れてはいない。レクサスならでは....という差異は感じなかった。すべてが電動で動き、スイッチが多く、木目パネルと金属プレートの使い分けも上手い。メーターはオプティトロン.....文句は無いがもう一味、新しさを感じさせて欲しかった。リヤシートは狭い。ヘッドルームもさることながら、足先をフロントシートの下に入れる事が出来ない(正確に言えば天地が狭くで入れ難い)リヤシートを多用する人には難しい選択になりそう。トランクルームもフルカバーされ品質感は感じたが、容量はソコソコ。全長4575×全幅1795×全高1430mmのボディサイズから想像されるほどの広さは無い。まぁ幅広いフェンダーなどをみれば想像できると思うが。スタイリッシュなスポーツセダンとしてみればこんなものかな...というレベル。ドアの開閉音も至って普通のトヨタ車と変わりない音で(ドアフェチとしては...)ガッカリ。やはりベンチマークはBMWの3シリーズと言う事になるのだろう。いよいよ、試乗である。10分程度街中を走っただけなのでハンドリング等深い事は判らなかったが、乗り心地はトヨタとしては堅め。前後とも225/45R17のTOYOプロクセスを履いていた。街乗りではこれ位が限界か。もう少ししなやかな「いなし」が感じられれば更に良いのだが。試乗したグレードは470.0万円のIS250 バージョンL(AWD)である。本革シートにはベンチレーション機能があり、お尻も背中もスースーと風が出てくるのには参りましたね(笑)。一番残念だったのは電動パワーステアリングのフィーリングがイマイチ。特に中立付近の据わりが悪い(重さは適切だと思うが。)このクラスのFR車でスポーツセダンを名乗る以上はステアリングのフィールが悪いのは致命的だ。ステアリングの遥か彼方でフロントタイヤが回っている...そんなステアリングだ。ブレーキのタッチは良好。エンジンは最近のトヨタ車(クラウンやマークX等)でもよく使われている4GR-FSE型2.5L V型6気筒DOHC。215ps/6400rpm 26.5kg・m/3800rpm は 1650kg(もあるのか...)のボディでも充分なパワーを発揮していた。(パワーウェイトレシオは8kg/ps)レクサスといえば過剰なまでの静粛性と言うイメージがあるが、ISに限って言えば普通。エンジン音もそれなりに聞こえるし、タイヤから出るロードノイズは結構響いてくる。私は静まり返ったクルマなんて気持ち悪いので問題では無いが。 (せっかく聞こえてくるならもっと良い音を聞かせて欲しいのだが、エンジン音はつまらない音だった。アイドリング時はチリチリと直噴独特のノイズが聞こえる。)6ATは反応も早く、良好。右(+)の左(-)のパドルシフトは慣れが必要だ。シフトレバー側で操作してしまう。総じて車両本体価格で470万円に達するクルマとしてみれば合格点を出す事は出来ない。(ハードウェア的に「トヨタ」と「レクサス」の違いが明確に体感できなかっただけに)せいぜい、350万円だろう。しかし、ブランドとはモノの良し悪しの他にサービスや雰囲気、ステータスを加味(期待)して買うのだろうから、後は購入者がいくら上積み出来るのかだろう。(ちなみに骨格的には近しい存在の
マークX 250G Four“Lパッケージ”が329.7万円である。ISは +150万円である)少なくとも、現時点ではレクサスに対して特別なブランドイメージが持てない私にとってはコストパフォーマンスの悪い買い物といわざるを得ない。国産で選ぶとしても日産フーガの350GT FOURでさえ、420万円である。本当に高級なものとは自分から「高級なんです」とは言わないもののはずだ。レクサスの今後の動向に注目していきたい。